口中の謎

未知との遭遇

ありあわせのつまみで、深夜にひとり晩酌をしていたのです。
おいしいわーと味わっていたら、食べ物とは異質の硬いものが。あ、歯が抜けた?
いや、詰め物が取れたのね。取り出して眺めるとキラキラシルバー。明日歯医者に行かなくちゃ。
でもこれどうしよう、無くしそう。
試しに元の位置(たぶんこのへん)に舌探りで押し込めば、幸いぴたりと嵌まり、これでひと安心と眠りにつきました。

翌日、近所の歯医者さんで「下の歯の左奥です」と申告し、ピンセットのようなものが口中に。
軽くひっかければ取れるはずなのに、若い男の先生がかなり踏ん張っても取れない。
「左奥ですよね?」「あれ?…一番奥じゃなくてひとつ手前だったかもしれません」再チャレンジ。取れない。
「おかしいですね。他にも気になるところありますか?(「あります」)レントゲンを撮ってみましょう(「ハヒ」)」
レントゲン室で撮影中、うーん。なんだか違うかも。下の歯じゃなかったかも。と思い始めたわたし。
いや、そんなんありえないけど飲んでたし、あるかも。そうだよ、嵌めこんだの上だった…!!
おそるおそる告げると、先生は快く「やっぱり!あんなに力入れて外れないはずがないですからねえ」と今度は上の奥歯にトライ。「銀色ですよね?」「ハヒ」。
ヤットコ状の道具に持ち替えた先生、むぬぬぬ、コキッと音がして一番奥の銀歯が外れました。
あれ? これじゃない!!! 昨夜見たのは5ミリ程の薄片で、これはくっきり歯形の大きな被せ物。
「すみません。これじゃなかったです…」「…えっ…!?」 
重い沈黙の後。
先生はレントゲン画像を指して「これ、今のここですね。かなり昔に入れた銀歯ですよね、セメントが削れて隙間ができていたので、このまま使えなくもないですが、新しいのを作られる方がよいかと(テキパキ)」
「あの、あのう、その手前の歯じゃないかと思うんです。昨夜外れたの(わかんないけど)」
「………そうですか。無傷の歯を何本も引っ張ってしまったので、今日はここまでにしましょう。あ、次回までに取れたら飲み込まないように気をつけてね。奥の銀歯は作っておきますから」。

なんということでしょう、自分の口の中わずか30本ほどの歯のどれかもわからないなんて。
本当に情けない。もしかして夢だったの? ※ワイン3杯めだったしな
落ち込みながら帰宅し、手鏡サイズの拡大鏡を口の中に差し込み、iPhoneのライトで照らしながら眺めてみました。
詰め物の形から、おそらくこれという目星はつきましたが、真相は今度外れてみなければわからない
食事中に外れるかもと思うと消化に悪そうなので、早くその瞬間が訪れてほしいです。

やはり、なにごとも記憶より記録
思い込みやぼんやりもはげしくなるお年頃(でもこれ年齢じゃなくて自分だからかも/泣)
次回外れた暁には、可及的速やかにパーツと口中の画像を押さえよう!
たとえ酔いどれていても。驚きや痛みに飲み込まれてはいけない。冷静に記録あるのみ。
そう心に刻みました。




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